『バレエ・メカニック』津原泰水

バレエ・メカニック (想像力の文学)

バレエ・メカニック (想像力の文学)

8/9読了。80冊目。
去年の日本のSFランキングでは『ハーモニー』『あなたのための物語』に続いて第3位。これは読まなきゃとずっと思っていてやっと読む。
SFをたくさん読んできたわけではないけど、SF的意匠に関して目新しい作品でないのはわかる。全体は三部構成で、一章では少女の脳と直結した街における幻想の氾濫、二章では金糸雀という少女を自らのうちに抱え込むことになった龍神という脳外科医の探偵小説的追求、三章でははるか未来、サイバーパンク的世界で事件に結末を見出すためにまた事件が起こる。
注目すべきはその文体。日本語がうまい。幻想文学において、文体の巧妙さがあますところなく発揮される。読みながら、色がなく強烈な臭気に包まれた街に引きずり込まれる。
とはいえ、文体だけで長編を読むのはつらい。途中で飽きてしまう。でも『バレエ・メカニック』には華麗な構成や唐突な展開、何とも魅力的な与太話がある。何度か読むのがつらくなったりしたけれど。