『知性の限界』高橋昌一郎

知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性 (講談社現代新書)

知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性 (講談社現代新書)

7/6読了。今年68冊目。
『理性の限界』の続編。『理性の限界』で語り残された様々な議論が、前作と同じ個性的な人物たちによるディベートの形式で展開されている。
扱われる話題は、ウィトゲンシュタイン言語ゲーム帰納法に関する種々の議論から、宇宙論や神の存在証明まで多岐にわたる。これだけ多彩な話題のエッセンスを抽出してコンパクトな新書一冊にまとめあげるのに、架空のディベートという形式が大きな役割を果たしている。哲学の入門書のなかには対話形式や話し言葉が選択されているものも多く、その目的は多種多様だけれど、その多くは読みやすさを追求した結果ではないかと思う。しかし『知性の限界』の場合、最大の要因はたぶん極論を述べられることにある。もし筆者一人の視点から語ろうとすると、過去に記された大量の文献に配慮しなければならない。すると記述は煩雑になり、読者にはわかりづらくなる。架空のディベートの形式にして何か一つの理論を信奉する人物たちを登場させれば、彼らに極端な意見を無責任に語らせることができる。極論はときに有害だが、理解しやすい。読者は極端な立場からの意見を総合することによって、楽しみながら、議論の全貌を理解することができる。よく考えられた名著だなあと思った。