『神話が考える ネットワーク社会の文化論』

神話が考える ネットワーク社会の文化論

神話が考える ネットワーク社会の文化論

5/13読了。今年51冊目。
東浩紀の弟子のひとり、福嶋亮大の新著。『ユリイカ』2008年8月号から2009年8月号まで連載された「神話社会学」をもとに、再構成されて大幅に書き直されたもの。『アーキテクチャの生態系』の地平から『動物化するポストモダン』を更新する、みたいな本。
まず「神話」という用語の定義から始まる。ぼくは連載を途中から読もうとして「神話」のニュアンスを掴めず挫折してしまったので、この親切さはうれしい。この本では「神話」という言葉が普通とは違う使われ方をしている。「神話」とは、古来から語り伝えられた物語ではなく、ネットワークにおける情報処理の様式みたいなものらしい。人はネットワークの結節点となり、そのような時代においては人よりもむしろネットワーク(神話)が考えるというのが根本的な発想。
西尾維新から村上春樹、東方プロジェクトからエンドレスエイトまで、それぞれの作品が明確な役割を負わされていて議論は明晰に進む。全体の流れはとてもわかりやすく、順番に読んでいけば全体として何が言いたいのかはだいたい理解できる。情報化社会を全肯定したうえで、どのような表現が求められるのか、あるいは人はネットワークに対してどう振る舞うべきなのか、という問いを追求するのが大きな目的なのだと思う。