『ロリータ、ロリータ、ロリータ』若島正

ロリータ、ロリータ、ロリータ

ロリータ、ロリータ、ロリータ

4/28読了。今年46冊目。
ナボコフの『ロリータ』の翻訳者、若島正が書いた『ロリータ』の解説本。若島正が『ロリータ』を読み込んでいくなかで生まれた疑問や深い読みを提示することで、『ロリータ』の魅力を伝えようとする。文芸批評ではなく、『ロリータ』に仕掛けられた膨大な量の謎を一部でも解き明かすガイドブック的な位置づけ。
『ロリータ』の細部に散りばめられた言葉は全体に共鳴している。地名や人名などの固有名詞に言葉遊びが仕掛けられていたり、ほんのちょっと登場したアイテムが遠くのシーンと重なっていたり、日付が詳細に計画されていたり、『ロリータ』は一読するだけではもったいないくらいに様々な伏線が張り巡らされている。
気になったのは、ナボコフの魅力はその精密さだけではないのではないか、ということ。『ロリータ』という小説に関してはよくわからないのだけれど、ぼくがナボコフに対して抱いているイメージは少し違う。ロシア文学の壮大さとポストモダン文学の先駆となるような語りの複雑さを共存させているような、どこで知ったのかは忘れたけれど、そういうイメージ。これに関してはとりあえず他の作品も読んでみなければわからない。