『サド侯爵夫人・わが友ヒットラー』三島由紀夫

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

4/14読了。今年43冊目。
三島由紀夫の戯曲の代表作2作収録の文庫。「サド侯爵夫人」は6人の女性たちがサド侯爵について語りあう話。「わが友ヒットラー」はヒットラーが独裁者となる直前の数日間を描いた話。
三島由紀夫はこの二編の戯曲を対照的なものとして構想したらしい。「サド侯爵夫人」には女性しか登場せず、「わが友ヒットラー」には男性しか登場しない。「サド侯爵夫人」はセリフだけで舞台の技巧を最小限にとどめたシンプルな劇なのに対して、「わが友ヒットラー」は舞台の奥を向いてヒットラーが演説しているシーンから始まるトリッキーな劇だ。
三島由紀夫の装飾過多できらびやかな文章が、小説では小難しくなってしまうことが多いのに対して、演劇では身体的な基準をもった響きのある言葉が紡ぎ出されている。戯曲の方がいいという人もいれば小説の方がいいという人もいるが、ぼくはどちらかといえば小説の方が好みだと何となく思う。《豊饒の海》四部作も『鏡子の家』も高校生のうちに読んでおきたかったのだけれどこのペースでは少し厳しいかもしれない。