『1/2の騎士』初野晴

1/2の騎士 (講談社文庫)

1/2の騎士 (講談社文庫)

4/11読了。今年42冊目。
主人公は高校3年生の女の子で、アーチェリー部のキャプテンをしている。彼女はアーチェリーの全国大会で高い成績を残し、後輩から慕われている。アーチェリー部には親友もいて、進路に迷ってもいる。そんな彼女が騎士と出会い、二人で街を守るために犯罪者たちと戦う。
形式は米澤穂信の小市民シリーズに近くて、街を襲うシリアルキラーの正体を手がかりを集めて突き止めるというもの。でも、『1/2の騎士』はミステリの要素だけを抜き出しても面白いのだけれど、この小説を特徴的なものにしているのは自意識の葛藤と社会的マイノリティの問題をうまく接続している点だと思う。
青春小説の多くはどちらかというと内向きで小さな世界に自閉しているのに対して、『1/2の騎士』は主人公が積極的に行動して社会と関わり、事件を解く。そしてそれがそのまま主人公の実存に関わっていく。ありふれていそうで意外と読んだことのないタイプの小説だった。主人公を導く大人たちが世間的には決して褒められた人物でなく、主人公自身そういうものとして接しているというのも、押しつけがましくなるのを防いでいる。
この小説はもっとたくさんの人に読まれるべきなのだと思う。個人的には文体やガジェットなどの細かい点でそこまで響いてこなかったけれど、偏らない表現で読みやすいという点ではすごくよくできている。