『AURA~魔竜院光牙最後の闘い~』田中ロミオ

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

4/4読了。今年41冊目。
スクールカースト邪気眼を題材に、他者とのつきあい方を学ぶ。いや、間違っていると思うのだけれど、スクールカーストものはどうしてもクラス社会を生き抜くためのマニュアル本という側面を重視してしまう。でもとにかくすごいライトノベルだった。こういうのを読むと、ライトノベルというジャンルは文学史上に残る作品を残せるのではないかと思える。
田中ロミオは作家としての能力が高い。文章が最高にうまくて、キャラもバランスがよく、構成もわかりやすい。この小説自体はライトノベルの文法にのっとって書かれているけれど、その奥にある普遍的な部分に関しては日本近代文学の名作といい勝負ができるかもしれない。他者の問題は大昔から語られ続けている文学の題材で、社会の中で自分のアイデンティティをどう定めるか、自意識とどう向き合うかというのも普遍的なテーマだ。
軽い文体にイラストをつければすべてライトノベルなのだから、ライトノベルというジャンルはゲーム的リアリズムみたいな新しいリアリズムを書くのに相応しいと思っていたけれど、むしろ『AURA』のように普遍的な小説を生み出すことをできるジャンルなのだとわかった。もっとも、それは田中ロミオという作家の才能を拠り所としているので、すべての作家に可能なことではないかもしれない。
ぼくはいつもライトノベルについて語るときに、ライトノベルというジャンルについて考えてしまう。ライトノベルという枠を外して純粋に一冊の小説としてライトノベルを語れるようになれば、ぼくもやっとライトノベルを読めるようになったということなのだと思う。これからはそういうところも意識して読んでいきたい。