『プラスティック・ソウル』阿部和重

プラスティック・ソウル

プラスティック・ソウル

3/3読了。今年27冊目。
無情の世界」から『ニッポニア・ニッポン』へと大きな変化を遂げる阿部和重が、その中間期に『批評空間』にて連載した中編。
一読した感想としては、『アメリカの夜』や「ABC戦争」のような語り手が分裂する構造を持った作品であり、あまり新鮮味を感じなかった。ぼくはそういった小説が大好きだから、大量生産してくれるならいくらでも喜んで読むのだけれど、だからといって阿部和重の停滞はどこか腑に落ちない。阿部和重自身もこの作品を気に入っていなくて、連載終了から5年以上も単行本化していなかった。
だが、これらの懸念は付録された『プラスティック・ソウル』リサイクルによって解消される。これは福永信による『プラスティック・ソウル』の解説のようなもので、対談が引用されながらこの時期の阿部和重に起こっていたことを丁寧に説明されている。
ぼくはそれを読んで、「それまでの阿部和重」からの進化と「それからの阿部和重」への飛躍を見つけることができた。すごくよい解説だと思う。そういうわけでぼくがここで語るべきことは何もない。やっぱり阿部和重はおもしろかった。『ピストルズ』も刊行されることだし、夏までには全作品を読んでしまいたい。