『伝奇集』ボルヘス(訳:鼓直)

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

2/20読了。今年19冊目。
あふれ出すアイデアをいちいち長編にするのは時間がかかるから短編で書いた、という有名な短編集です。それぞれの短編は推理小説からSFまで個性豊かですが、何となく一貫性があるような気がするから不思議です。
個人的には「バベルの図書館」がもっとも面白かったです。すべての可能な文字列の本が、ほとんど無限に広がる図書館に置かれていて、でも一冊も重複しません。そこで生きる人の中には、他のすべての本の鍵であり完全な要約である本がなくてはならないと信じる人がいます。あるいは、本Aの所在を示す本Bがあり、本Bの所在を示す本Cがあり、……という考え方もあります。この図書館を実現するのは物理的に不可能ですが、量子コンピュータが発明されれば、インターネットは「バベルの図書館」に近づきます。少しずつですが、人類の技術はボルヘスの想像力に追いついてきているのかもしれません。