『ロリータ』ウラジーミル・ナブコフ(訳:若島正)

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

2/19読了。今年18冊目。
読み始めてまず驚くのは、注釈がとても多いことです。なぜ注釈が多いのかというと、注釈がなければ意味がわからないような引用や言葉遊びが多いからです。注釈には、「作品の結末に関する言及もあるため、本文読了後にお読みください」という但し書きがついているのですが、おそらく再読するだけの体力はないだろうと思ったので、最初から注釈を参照しながら本文を読みました。注釈なしでは不可解だったり何の含みも読み取れずに終わってしまうような部分が多く、旧訳の注釈がどのようなものだったのかは知りませんが、おそらく旧訳の読者が再読すれば大きく印象が変わると思います。それくらいに、『ロリータ』にとって注釈は重要な位置を占めています。
注釈を参照しながら文章に隠された意味を追い続けるのに対して、一冊の骨太の小説として読むのもひとつの読み方です。裏表紙のあらすじにもあるように、『ロリータ』は恋愛小説であり、ミステリであり、ロード・ノヴェルでもあります。大江健三郎の解説は、「小説勉強にこれ以上はないテクストとして」『ロリータ』を勧めるという内容です。このように、『ロリータ』は随所に謎を孕む小説であると同時に、小説のお手本のような存在でもあるのです。『ロリータ』はこの両面性を達成できたことで、刊行当時は性的倒錯を描いた問題作として受容されながらも、様々な人たちに読まれる古典として生き残っているのだと思います。
たぶん近いうちに、『ロリータ、ロリータ、ロリータ』を読みます。