『ナンバーワン・コンストラクション』鹿島田真希

ナンバーワン・コンストラクション

ナンバーワン・コンストラクション

12/25読了。今年138冊目。
『六〇〇〇度の愛』を読んで、鹿島田真希は女性性について書く人だと思っていた。だから、ぼくからは遠い話題を扱う人だろう、と。しかし『思想地図vol.4』に掲載されていた短編はBLの二次創作で、楽しんで読めた。宇野常寛はキャラクターの観点から読み解いていたけど、この解説がよくわからなかった。それが『ナンバーワン・コンストラクション』を読むことで少しわかった。鹿島田真希の入門としてふさわしいのではないかと思う。
象徴を目指して超越しようということが、建築を通して語られる。そこまでの過程も読みやすくてわかりやすく、でも同時に哲学的で文学的。語られている内容をそのまま読むとこんな感じだと思う。でも、文体に注目することでまた別の見方もできる。
建築を研究する教授と、大学院で建築を学びながら小説家を目指す無邪気なM青年。彼らは類型的なキャラクター造型で、星新一を連想したほどだった。そして、ぼくが注意して読んだ限りでは、描写に身体的な表現がない。痛いとか苦しいとかそういうのがない。これはわざとカットしているのだと判断していいんだよな。こういうところを見れば、宇野常寛が言わんとしていたことが少しずつわかってくる。