『サマー/タイム/トラベラー 2』新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

12/3読了。
舞台となっている辺里市は、開発が進みつつあるけどまだ田舎っぽい場所も残っている。東京は行こうと思えばすぐに行けるけど、やっぱり遠い。それくらいの距離。語り手の初年は成績がとてもよくて、中学のときに開成でも灘でも行けると担任教師に言われたらしい。それでも彼は上京しなかった。高校は辺里市の県立高校に行った。彼は、どうして自分は東京に行かないのかと問われる。

 だって、もしもそこに何もなかったら、ぼくはどうしたらいいんだ?
 東京で、何も見つけられなかったら? そこには大切なものが何ひとつなかったら? 未来が見当たらなかったら?
 あるいは……見つけたくないものを見つけてしまったら?(147ページ)

可能性をいつまで保留するか。これは、そういう話なんだと思う。見なければ、不確定のままでいられる。でも、自意識過剰で好奇心ばかりが先走る高校生には、確定した現実は刺激が強すぎると思う。それは、大学生になってからでいいんじゃないか。かなり個人的な話だけど。