『群棲』黒井千次

群棲 (講談社文芸文庫)

群棲 (講談社文芸文庫)

10/27読了。今年108冊目。
内向の世代」の作家の一人である黒井千次1984年作品。ある路地に建つ四軒の家の間に起こるちょっとしたドラマを様々な視点から連作短編として描いた作品。
全体を通して読んでみて、「文学」に向き合う姿勢が真摯だなあと思った。つまり、文学作品としてとてもよくできていると思った。隠喩はいちいち丁寧だし、ことば選びもわかりやすい。『カンバセイション・ピース』が猫を視点にして家を描き出そうとしたのだとするなら、『群棲』は土地を起点として家を描き出したのだと言えるかもしれないと漠然と感じた。
ぼくが積極的に読みたいと思うのは、文学の形式を逸脱しようとするもので、「秀作」と呼ばれるようなものを読んでも大きな感動は得られないような気がする。そういった逸脱の態度は時代によって違うだろうから、1992年生まれのぼくが読んで面白いと思えるのは、90年代以降の小説に多いのかもしれないと思った。