『スティル・ライフ』池澤夏樹

スティル・ライフ (中公文庫)

スティル・ライフ (中公文庫)

9/14読了。今年90冊目。

ある日ぼくの前に佐々井が現われ、ぼくの世界を見る視線は変った。しなやかな感性と端正な成熟が生みだす青春小説。芥川賞受賞作。

池澤夏樹のデビュー作。登下校の電車の中で読んだ。
紹介文には「青春小説」と書かれているけど、さっきのエントリに書いたとおり、ぼくにとっては自意識過剰でこそ青春小説だ。では、みずみずしい感性で切り取られた「スティル・ライフ」の世界が青春小説でないのかと尋ねられると、青春小説でないと断言するわけにもいかなくて、少し困る。確かに客観的に見ると青春小説であるような気もする。でも、ぼくはこの小説から「青春小説」をとりだすことはできない。なぜなんだろうと考えてみると、この小説を青春小説だと思うひととぼくでは「自意識の過剰さ」にずれがある、という苦しい結論にたどり着いた。つまり、雪が海に降るのを見て感動してしまうのも一つの自意識の特性で、例えばスポ根の仲間意識とかも自意識のうちに含めると、青春小説=自意識過剰が適用できる。ああ、やっぱり苦しいな。
ぜんぜん関係のないことばかり書き連ねたけど、とてもよい小説だと思いました。解説にも引用されている雪が降る描写は何度も何度も読み返してしまった。どうしても好きになれないのは、ぼくが素直な文学少年/文学青年ではなかったからだと思います。