『記憶の果て』浦賀和宏

記憶の果て (講談社文庫)

記憶の果て (講談社文庫)

8/31読了。今年87冊目。
第5回メフィスト賞受賞作。浦賀和宏は当時19歳で、これは現在でもメフィスト賞受賞の最年少記録。次が佐藤友哉西尾維新、岡紾隼人の20歳らしい。
それだから、きっと佐藤友哉のように完成度よりも若い勢いが評価されての受賞だったのだと思っていた。しかし、それは間違いで、もちろん青春小説としても面白いのだけど、しっかりしたプロットのまっとうなミステリだった。
18歳の主人公が、高校の卒業式を終え、大学に入学するまでの長い春休みに起こったできごとの話。原因不明の自殺を遂げた父親が残した人工知能みたいなコンピュータの謎を追ううちに、主人公の出生の謎に接続するというストーリー。人工知能について調べる中で、たくさんの脳に関する蘊蓄がでてきて、その語り口が京極夏彦っぽい(京極夏彦を最後に読んだのはだいぶ前だから自信ないけど)。いわゆる「本格推理小説」的な殺人事件やトリックはないのだけど、確かにメフィスト賞を感じさせる上質なミステリだった。
それにしても、残された謎が気になる。『時の鳥籠』も読みたくなってくる。でも積読は山積み。