『不可能性の時代』大澤真幸

不可能性の時代 (岩波新書)

不可能性の時代 (岩波新書)

8/19読了。今年83冊目。
見田宗介は『社会学入門』の中で、1945年から70年までを「理想の時代」、1970年から95年までを「虚構の時代」と区分した。大澤真幸は1995年以降いまも続いているこの時代を、「不可能性の時代」と名付ける。東浩紀の用語では、「理想の時代」は大きな物語が存続していた時代、「虚構の時代」が大きな物語が失墜したがそれを代替する物語を作り出そうとした時代、「不可能性の時代」は物語をつくるのをやめてデータベースを参照して作品を楽しむ時代、というふうになると思う。
この本は、その三つの時代区分を、社会現象や凶悪事件、アニメまでを参照しながら解説するという本で、物語性があり、純粋に面白い。興味をそそられる。しかし、しっかりしているけどおおざっぱなこの時代区分がとりこぼした現象や事件はここでは無視されている(無視せざるをえない)ので、とても便利な概念だとは思うけれど、頼りすぎてもいけないと思う。