『春季限定いちごタルト事件』米澤穂信

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

7/30読了。今年74冊目。
日常の謎をテーマにしたライトノベル。友人に勧められて読んだ。
「小市民」を目指す二人の高校生、小鳩君と小山内さんが身近に起こった事件を解決するという短編集で、多くの点で北村薫の『空飛ぶ馬』に影響を受けていると感じた。ミステリーの部分(「日常の謎」)に関しては、ほとんど同じような趣。物語の展開でも、『空飛ぶ馬』における落語の影響を受けたきれいな起承転結が、『春季限定いちごタルト事件』にも表れている。キャラクター先行でなく物語の枠組みから作られていそうなこのような作品でも、ライトノベルの枠に入れられていることに驚いた。この二作品はともに青春小説としての側面があるけど、15年の時代を隔てているため、雰囲気がだいぶ違っている。『春季限定いちごタルト事件』では、主人公=探偵の小鳩君はクラスメートの小山内さんと「小市民」を目指すという約束を結んでいて、でも小鳩君はついつい謎解きに熱中して「小市民」から逸脱してしまう。そのたびに小鳩君は後悔して、小山内さんに謝る。高校生が感情移入しやすい探偵で、「探偵の悩み」としては面白いと思った。
この本を薦めてくれた友人は、米澤穂信の心髄はミステリーではなく青春小説のパートにあることを主張していたけど、それも納得できる。空いた時間に手軽に物語を楽しむのには最適な本だと思う。また続編も読みたい。