『クリスマス・テロルーinvisible×inventor』佐藤友哉

クリスマス・テロル invisible×inventor (講談社ノベルス)

クリスマス・テロル invisible×inventor (講談社ノベルス)

7/29読了。今年73冊目。

犯人は読者です(本当)。

佐藤友哉の4作目の作品。講談社ノベルス20周年記念企画として、メフィスト賞作家が密室をテーマとした作品を書いたうちの一つ。『フリッカー式』にも少しだけ登場した小林冬子が主人公で、急に衝動に襲われて見ず知らずの孤島に行く。そこで小屋に引きこもってひたすらパソコンに向かっている男を監視することになる。そして佐藤友哉らしい壊れた人物もたくさん登場して、物語が進んでいく。ちゃんと密室も出てくるけど、ミステリーというよりも文学っぽいガジェットが多い。文庫版の解説を読むと、『クリスマス・テロル』はオースターの『鍵のかかった部屋』を下敷きにしているらしい。予定している順番では『鍵のかかった部屋』を読むのはだいぶ先になりそうで、またそのときまではどこが引用なのか、あやふやなままで放置することになりそう。

鏡家サーガは、もう書けません。

問題作といわれるゆえんの終章に関しては、そんなに驚いたり腹を立てたりすることなのだろうか、とむしろ読者の反応の過剰さに驚いた。確かに、作者の個人的な恨みつらみを作品内で吐露するのは珍しいことかもしれないけど、この作品を出版したのは面白いことならなんでもやってしまおう、という姿勢をもとから示していた講談社ノベルスだし、自分のシビアな悩みまでエンタテイメントにのせてしまうほどではなくとも、道化的に振る舞う作家は多い。だからといって終章の衝撃が小さくなるわけではないけど、「作家と出版社として倫理的に問題」みたいな感想には呆れてしまった。
ここで表示されているのは講談社ノベルス版だけど、文庫版には『クリスマス・テロル』の内容や当時の作家と周囲を取り巻く状況に関しての詳しい解説が付け加えられている。これもとてもよかった(ぼくは本屋で立ち読みした)。