『ロートレック荘事件』筒井康隆

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

ロートレック荘事件 (新潮文庫)

7/28読了。今年72冊目。
ネタバレ注意。
絶対にネタバレをしてはいけない推理小説の一つ。叙述トリックの傑作。
叙述トリックというのは、物語の終盤でそれまで思い込まされてきた事実が実は間違いだったと判明し、見え方がまったく変わってしまう、というトリックのことで、多くの叙述トリックは一気に伏線が回収され、とてもすっきりとした読後感を味わえる。しかし、『ロートレック荘事件』の場合は少し違い、真相が明かされてからもう一度読み直さなければ、伏線がどう張られていたかわからないというものだ。あとからぱらぱらと見直すと、いちいち凝った書き方がなされていることに感動はしたけれども、一瞬の衝撃に重きを置く他の叙述トリックとは、少し毛色の違うものだと言えると思う。
でもやっぱり筒井康隆は『虚構船団』の想像力がすごすぎて、どうしても過剰な期待をしてしまい、多少の失望もあった。