『終わりの街の終わり』ケヴィン・ブロックマイヤー

終わりの街の終わり

終わりの街の終わり

死者たちの暮らす、名も無き街。ある者は赤い砂漠に呑まれ、ある者は桃の果肉に絡みとられ、誰一人として同じ道をたどらずやって来る。生きている者に記憶されている間だけ滞在できるというその場所で、人々は思い出に包まれ、穏やかに暮らしていた。だが、異変は少しずつ起こっていた。街全体が縮みはじめたのだ。その理由について、死者たちは口々に語る。生者の世界で新型ウィルスが蔓延しはじめたこと、人類が滅亡に向かっていること、そして、南極基地でただ一人取り残されたローラという女性について―死者たちの語る話からほのみえてくる終わりゆく世界の姿とは…。

5/23読了。今年47冊目。
奇数章は「終わりの街」の話。偶数章は南極に取り残された人類の生存者ローラ・バードの話。世界の終わりを書くにあたって、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と同じような構成を採用している。過酷で孤独な世界の終わりと、それと対照的な穏やかな街の生活。「終わりの街」のパートは、章それぞれ別々の人物にスポットを当てて描写されている。一つの章が短編としても成立しそうなものもあり、さすが短編の名手らしいと思った。文章は少し読みにくくて、これは訳のせいではなくあまり説明しない文体の影響かと思う。