『ラカンの精神分析』新宮一成

ラカンの精神分析 (講談社現代新書)

ラカンの精神分析 (講談社現代新書)

愛の精神分析――必然性を担う者のこのような呼び出しが、エディプスコンプレックスの核心であるという考えは先に述べた。精神分析の仕事は、エディプスコンプレックスの解消に向かうものであるのだから、分析家は、呼び出されたこの必然性への志向、つまりは愛を、分析することが仕事になる。ラカンが、「科学が成立したのちに、精神分析が創出された理由、それは、愛について話すということは、いつになっても、悦びであるからだ」と述べるのは、そういう事情に基づいていると考えられる。人間主体は、存在と関係の必然性を与えられず、偶然性の中に落とし込まれている。このことはすでに大昔に言われていた。「人間は迷える小羊」であるという形で。こういった状態から、人々は必然性を回復したいと望むのでだ。かつては1人1人が、エディプス期においてその必然性を創り出したことがあったのに、それを見失ってしまったのである。それはなぜか。また、それを回復しようとすることは、間違ったことなのだろうか。――本書より

4/6読了。今年31冊目。
ラカンの入門書としては一番簡単でわかりやすいと言われている本。確かに、わけわからなくはない。
自己と他者と神の関係を黄金数で表す、というふうにイメージしやすくさせる努力が各所から伝わってきた。そのおかげで、難しい概念はなんとなくイメージして次に読み進むことができる。ただもともとの思想が難解なので、全体としての感触はまったく掴めなかった。ラカンの解説書は他にもいろいろ出ているので、数をこなせば少しくらいラカンに近づけるかもしれない。
やっぱり一番面白かったのは鏡像段階論のところで、有名だけあってこの話は理解しやすい。赤ん坊の頃は鏡だったが、成長すると他者に自分を映すようになる、というところは感動した。
難しすぎるからなのかどうか、『現代思想のパフォーマンス』のときもそうだったけど、読んでいると涙が出てくる。この現象もぜひ精神分析して欲しい(笑)。