『フーコー入門』中山元

フーコー入門 (ちくま新書)

フーコー入門 (ちくま新書)

「真理」「ヒューマニズム」「セクシュアリティ」といった様々の知の「権力」の鎖を解きはなち、「別の仕方」で考えることの可能性を提起した哲学者、フーコー。われわれの思考を規定する諸思想の枠組みを掘り起こす「考古学」においても、われわれという主体の根拠と条件を問う「系譜学」においても、フーコーが一貫して追求したのは「思考のエチカ」であった。変容しつつ持続するその歩みを明快に描きだす、新鮮な人門書。

3/18読了。今年25冊目。
とてもよくまとまったフーコーの入門書。フーコーの仕事を順番に読み解く、という非常にわかりやすい構成で、入門書としては完璧だと思う。
精神医療の否定、医学の否定、地の考古学、監獄の権力構造、真理について、実存の美学。ふり返ってみると実に多様なことに言及したフーコーの思想を貫くもの。それを描き出したかったと筆者はあとがきで書いている。ディスクールとかエノンセという概念はよくわからなかったけど、それを除けば、難しい概念もかみくだいて説明してあって、初心者でもよくわかる。ただし、多くのトピックを扱っているがゆえに、そのぶんそれぞれの項目についてはあまり掘り下げられていない。それは入門書には仕方のないことで、興味を煽るという意味では、この本は入門書の役割を大いに果たしていると思う。