『3001年終局への旅』アーサー・C・クラーク

3001年、海王星の軌道付近で奇妙な漂流物が発見された。それこそ、一千年前に宇宙船ディスカバリー号から放擲された副長フランク・プールその人であった! やがて、蘇生されたフランクが目にする驚くべきものとは……? 全世界を熱狂の渦にまきこんだ『2001年宇宙の旅』にはじまるシリーズ、完結篇。

3/21読了。今年26冊目。
2001年宇宙の旅』から始まるシリーズの完結編。1968年、1982年、1988年、1997年というふうに、10年ごとくらいに出版されている。その間にクラークも変化し、それが作品に表れる。その変化を楽しむことができるシリーズだと思う。
シリーズの完結編として、けっこうきれいにまとまっていると思う。もちろん、映画とのかねあいや科学の進歩のために、それぞれの間に齟齬が発生している(土星から木星に替わったり)。だから、シリーズとしてまとまっているとは言い難い。でも、クラークなりのやり方で決着をつけようとしたのが伝わってくるから、それはじゅうぶん評価できることだと思う。
2061年から3001年へと1000年近くとぶわけだから、世界観もそう簡単に想像することはできない。読んでいる最中は、31世紀を表現するのにこれでは少しアイデアが足りないのでは、なんて偉そうに考えていたのだけれど、巻末にクラークによる科学的な進歩の予測に関する考察が20ページくらい付け加えられていて、クラークの緻密さを思い知り、自分の考えの甘さを恥ずかしく思った。
読む前に、今度はさすがにフロイド博士は出てこないだろう、それとももしかして冷凍睡眠で生き延びているのだろうか、とか想像していた。しかしまさかフランク・プールが舞い戻ってくるなんて、これっぽちも予想していなかった。彼が軌道エレベーター(作品中では宇宙エレベーターと書かれているが、ガンダム00のせいでこちらの方がしっくりくる)から地球を見下ろしたり、ブレインキャップとかいう未来技術に触れたりするのはとても羨ましい。ぼくは3001年の地球を見ることができない。
この物語は、完全に最後までを描いたわけではない。しかし、この微妙な中途半端さが人類の想像力の限界だし、クラークはそれを見事に描ききったと思う。本を閉じてから、天国のクラークを思って少し寂しい気持になった。