『ポストコロニアル(思考のフロンティア)』小森陽一

ポストコロニアル (思考のフロンティア)

ポストコロニアル (思考のフロンティア)

1945年の敗戦以降,忘却されていた植民地主義の問題が新たな課題として浮上している.いかにして近代日本の植民地的無意識は形成されたのか.後発近代国家が抱え込まざるをえなかった,欧米列強への過剰な模倣と擬態というその起源に溯り,植民地主義以後の世界を生きる現在の我々が解決すべき課題の所在を明らかにする.

3/5読了。今年19冊目。
世界の情況を題材にした岩波新書の『ポストコロニアリズム』と違い、今度は日本の歴史からポストコロニアリズムを探るというもの。思想家の名前は出てこない。第1章では、日本が開国して欧米に半植民地化される過程で、植民地主義的意識と植民地的無意識を同時に持っていたこと、また、自分よりも「野蛮」な国を見いだすことによって開化の進んだ国としての自意識を育てていったことなど。第2章では、夏目漱石の作品(とくに『門』)を通して、当時の日本の情況や、韓国併合について考える。第3章では、戦後日本からポストコロニアリズムを考える。
この本の重要なメッセージとして、簡単な二項対立に陥ってはいけない、またそのような言説にだまされてはいけない、というものがあって、これはしっかりと心に留めておこうと思う。それと、『門』はそろそろ読もうかと思っていたところだったので、そのうち読む。