『ジョン・レノン対火星人』高橋源一郎(講談社文芸文庫)

ジョン・レノン対火星人 (講談社文芸文庫)

ジョン・レノン対火星人 (講談社文芸文庫)

住所はなく、消印は「葛飾」、そして差し出し人の名前は、「すばらしい日本の戦争」…………
名作『さようなら、ギャングたち』に先立つこと1年、闘争、拘置所体験、その後の失語した肉体労働の10年が沸騰点に達し、本書は生まれた。<言葉・革命・セックス>を描きフットワーク抜群、現代文学を牽引する高橋源一郎のラジカル&リリカルな原質がきらめく幻のデビュー作。

2/5読了。今年9冊目。
ぼくは中学二年の時、毎日のように学校の図書館に通っていた。別に本を読むわけでもなかった。狭い図書館を巡って、背表紙を眺めて、本の世界の広大さに感じ入って、最後に少しミステリー小説を借りて、その本を電車で読みながら帰る。今からするとまだまだ無知で、背表紙だけでお腹いっぱいだった。でも、一週間に一回くらい、誰かが『ジョン・レノン対火星人』を読んで笑い声をあげる。こんなに素晴らしい本の世界が広がっているのに……。ぼくは読みもしないのにそんな偉そうなことを思っていた。でも、世間の評価では『ジョン・レノン対火星人』はミステリー小説よりも高尚な文学とされていることを知って、よくわからないけれどもとりあえず素晴らしいと思いこんでいた。
それから一年くらい経って、もう図書館に通うのもやめて、この本をちゃんと通して読んでみようと思った。すると、高橋源一郎の言葉は思っていた以上に切実だった。笑いとばすことはできなくなった。といっても、これは別にぼくの感性が鋭くなったわけではなく、ただ勉強して少し教養を身につけたから、というだけに過ぎないと思う。これを正直な反応ができなくなったと解釈するか、それとも賢くなったととるかは難しいところ。