2008年に影響を受けた本

年が明けました。2008年に読んだ本は102冊でした。目標の「年間100冊」は達成されました。去年をふりかえってみて、正直進歩したこともあまりなく、逆に16歳にして様々な能力の衰えを感じた年だったと感じます。仕方のないことです。でも、だからこそ受動的に読書を続けられたのだろうと思っています。読書によって、脳はある側面では進歩し続けると信じて、今年もたくさん本を読みたいと思います。とりあえず去年読んだ本のうちから心に残ったものをまとめてみました。ランキング形式にするには、それぞれの本の印象があまりに違いすぎたので、適当な順番で挙げただけです。ほとんど古典ばかりです。このセレクトは、きっと年齢のせいなのだろうなと思います。

カラマーゾフの兄弟』『悪霊』ドストエフスキー悪霊(上) (新潮文庫)カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

中3の秋に『罪と罰』を読んで、もっと早くに読んでおけばよかったと思いました。でも弟に勧めてもなかなか興味を持ってくれない。難しいものです。『カラマーゾフの兄弟』と『悪霊』はそれぞれキリスト教社会主義革命という別々のものを扱っていますが、なんだか少し似た構造を持っていると思います。きっと大事なことは表面的な思想には表れない部分にあるのでしょう。カラマーゾフは新訳でも読みたいです。
2008年1月をふりかえる - my beds on fire
『悪霊(上)』ドストエフスキー(江川卓・訳) - my beds on fire
『悪霊(下)』ドストエフスキー(江川卓・訳) - my beds on fire

戦争と平和レフ・トルストイ岩波文庫戦争と平和〈1〉 (岩波文庫)

今は新しく全6巻のコラム付きの新訳が出ているそうですが、残念ながら図書館には全4巻の古いバージョンしかなかったので、そちらで読みました。でも表紙は旧版の方がかっこいいです。読むのに1ヶ月かかったので、冬はずっとこの本を読んでいた記憶しかありません。
ぼくは、この本を壮大なキャラクター小説だと感じました。文学の名作も、群像劇の名目でキャラクター小説やっているのか、と感心しました。でもそんなことをいうけど、実は本場のキャラクター小説を読んでいないことに気づき、ライトノベルを読むことは2008年の目標だったのですが、満足に読めないで年が終わりました。その目標は今年に持ち越します。
友達とアンドレイのかっこよさについて語り合ったのはよい思い出です。よい友達を持ったと思います。
2008年2月をふりかえる - my beds on fire

1984年』ジョージ・オーウェル1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

初めに読んだときはホラー小説だと思いました。そして、社会主義なんて気やすく口にできなくなりました。監視社会というのは様々なところで論じたり描かれたりしていて、映画の『善き人のためのソナタ』や『カーニヴァル化する社会』など、何度も考える機会がありました。『時計じかけのオレンジ』などとの比較も興味深いです。
2008年2月をふりかえる - my beds on fire

『異邦人』アルベール・カミュ異邦人 (新潮文庫)

最初読んだときは意味がよくわかりませんでした。しかし、『哲学の教科書』の中で、(今思うととても簡単な説明だけなのですが)解説されていて、それをよんで強く感動しました。そして、この『異邦人』は不条理を完璧に再現した小説として、ぼくのなかに刻み込まれました。そして今年の終わりに『現代思想のパフォーマンス』を通して、この小説の悲しみが迫ってきて、不覚にも涙してしまいました。理由がよくわからなくて少し怖いです。
2008年3月をふりかえる - my beds on fire

『これがニーチェだ』永井均これがニーチェだ (講談社現代新書)

今年はけっこうたくさんの哲学の入門書を読みましたが、最もよかったのはこれです。
ニーチェの思想は刺激的です。少なくとも、ぼくは何度聞いても、いくらか興奮します。
しかし、この本の面白いところはそこではなく、ニーチェが何度も過去の自分を自己否定し、それに対する概念をも包括する立場へと飛翔していく様子が描かれている点です。原典にあたったわけではないのでどこまで確かなのかはわかりませんが、この考え方は社会へと適応していくことを求められる中高生時代の過ごし方への一つの回答であることは間違いありません。
これがニーチェだ / 永井均 - my beds on fire

『雪』オルハン・パムク雪

素晴らしい小説です。もし今年のナンバーワンを決めろと言われたらこれでしょう。
トルコの田舎町でクーデターが起こり、詩人のKaは雪の降る中それに立ち会う、という話です。
真夏に熱中しました。もし今の季節に読んでいたら、どんなふうだったのだろうと気になります。
落ち着いた詩的な感覚で、熱い革命の心を描いた本で、とても寂しくて切なくなってしまいます。
雪 / オルハン・パムク - my beds on fire

三四郎夏目漱石 三四郎 (新潮文庫)

漱石の青春小説です。男の子が上京して、女の人にフラれる話です。
去年に『それから』を読んだのですが、何の事件も起こらないお話で、漱石はいったいなにを描きたかったのだろう、と不思議に思っていました。そして、『三四郎』を読んで、その疑問は氷解しました。『三四郎』では大学生の青春を、『それから』ではニートの生活を描いたのですね。それらを比べると、確かにとても面白いです。
『三四郎』夏目漱石 - my beds on fire

『ゴーレム100』アルフレッド・ベスターゴーレム 100 (未来の文学)

年末にすごい本を読んでしまったと思います。まさにこれこそが、ぼくにとってのSFです。宇宙の壮大さに興奮することでも、ミクロの世界へと冒険することでもなく、まさに感覚を根本から揺さぶられるようなものこそが、真にSFと呼ぶに相応しい、と思います。
『ゴーレム100』アルフレッド・ベスター - my beds on fire

まとめ

内田樹から受けた影響とか(5冊くらい読みました)、ゼロアカも含め東浩紀やその周辺からの影響とか、『九回死んだ男』や『バイバイ、エンジェル』などのミステリーなど、昨年の読書生活についてコメントすべきことは他にもありますが、めんどくさいのでこの程度にしておきます。
去年読んだ本のうち、新品で購入して読んだものは『悪霊』の上下巻2冊だけでした。古本屋で購入して読んだのが5冊くらい。残りは全て図書館で借りて読んだことになります。お世話になりました。しかし、「図書館にないから読むのやめた」みたいなことが幾度もあったので、今年はもっと自分の好奇心に正直になろうと思います。