『ブギーポップは笑わない』上遠野浩平

ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))

ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))

 君には夢があるかい?残念ながら、ぼくにはそんなものはない。でもこの物語に出てくる少年少女達は、みんなそれなりに願いを持って、それが叶えられずウジウジしたり、あるいは完全に開き直って目標に突き進んだり、まだ自分の望みというのがなんなのかわからなかったり、叶うはずのない願いと知っていたり、その姿勢の無意識の前向きさで知らずに他人に勇気を与えたりしている。
 これはバラバラな話だ。かなり不気味で、少し悲しい話だ。——え?ぼくかい?ぼくの名は”ブギーポップ”——。
 第4回ゲーム小説大賞<大賞>受賞。上遠野浩平が書き下ろす、一つの奇怪な事件と、五つの奇妙な物語。

 初めて*1ライトノベルを読んだ。だいぶ前から読もう読もうと思っていたけれども、図書館で借りるのは恥ずかしい気がして、結局ブックオフで買って読んだ。借りるのは恥ずかしくて買うのは恥ずかしくないというのも変な話だ。
 まず表紙を開いて何枚かあるカラーページに驚く。キャラクターのイラストとセリフ。そういえば教室で級友が読んでいたのにもあったような。
 冒頭でもまた驚く。「…………」という沈黙の表現。聞いてはいたけれど、実際に出会うと少しとまどう。漫画的でわかりやすいと思った。「少年は沈黙した」とか書かれるよりもストレートに伝わってくる。これにも慣れなければ。
 それと改行がとても多い。ほとんど一文で改行されている。これにも慣れなければ。
 一人称表現がかなり話し言葉に近い。これは別に読みにくくない。ウェブ上の文章と同じような感じ。
 そういう細かいところを気にしているうちにあっさり読み終わってしまった。見た目以上に短い。改行とセリフ多いから当たり前か。
 それで内容の方はというと、正直期待したほどは楽しめなかった。キャラクターに感情移入できなかったからではないかと思う。心情の描写はほとんどされていない。キャラクターが記号的に動き回るだけ。情報過多な小説になれてしまうと、キャラクター小説に入り込むことはできないのかもしれない。一日で一冊読んでしまうなんて久しぶりだったのだけど。一気に読んでしまうことと物語に入り込むこととは意外に関係ないのか。

*1:厳密には違うけれど既に何年も前のことだ