『同性愛と異性愛』風間孝, 河口和也

同性愛と異性愛 (岩波新書)

同性愛と異性愛 (岩波新書)

6/6読了。今年59冊目。
同性愛が日本でどのように扱われてきたか、実例を取り混ぜながら明解に解説されている。河口和也は〈思考のフロンティア〉シリーズの『クイア・スタディーズ』の著者でもあるが、『同性愛と異性愛』はより簡潔で読みやすい記述がなされている。
もっともおもしろかったのは、第5章の「性同一性障害はなぜ注目されたか」という一節。性同一性障害に関する法整備が急速に進み、社会的に広く認知されてきたことは端から見ていても明らかだが、実はそこには社会の同性愛に対する考え方が透けて見える、という話。性同一性障害が注目された理由が二つ挙げられていて、ひとつは性同一性障害が医学の問題として提示されたこと、もうひとつは「心の性」と「体の性」の不一致であるとみなされること。前者は「同性愛は病気ではない」という同性愛者たちの主張とは反対の説明のしかただし、後者は移行後の性からすると異性を性愛の対象とすることが多く異性愛規範に接近することになる。メディアが性同一性障害を頻繁に扱いたがることに何となく違和感を抱いていたので、なるほどと思った。