『氷菓』米澤穂信

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

5/28読了。今年56冊目。
米澤穂信のデビュー作で、第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞受賞作。何となくさわやかな青春小説が読みたくなって手に取った。
素朴で高校生らしい登場人物たち、日常のちょっとした謎、さりげない伏線。いままで読んだ米澤穂信作品と同じように、おもしろいミステリーだった。
内容とはまったく関係のないことだけど、読みながら少し気になることがあった。『氷菓』の最大の謎は、学生運動の時代に起こった事件に関するものだ。それを知ったぼくは、もしかすると米澤穂信は1968年の記憶を背負っているのだろうか、と心配になった。米澤穂信は1978年生まれで、小市民シリーズを読む限りではそんな雰囲気はなかったけれど、デビュー作でそれを扱うくらいなのだから、当時のことを重要視しているのかもしれない。
でも、最後まで読んでそれが杞憂だとわかった。米澤穂信にとっては、1968年も日常の謎になりうる昔話でしかない。そこに政治的な意味や、思想的な意味がこめられることはない。安心して日常の謎にとりくむことができる。そういう高校生活への憧れをいまだに捨てきれないぼくは、また唐突に米澤穂信を読みたくなったりするのだと思う。