最近の佐藤友哉

本の貸出期限の延長のために近所の図書館へ向けて雨のなか歩きながら、去年の春休みにもこんなふうに図書館に行ったことを思い出した。一年前のぼくは、まだ佐藤友哉と出会っていなくて、とても純粋に17歳という年齢のもつ輝きに憧れていた。ぼくはこれから17歳になるんだ、きっとまさに青春みたいな出来事が待っているに違いない。そんなふうに思っていた。
それから一年かけて佐藤友哉の小説を読み進め、いまぼくは『デンデラ』を読んでいる。『デンデラ』を読み終われば、すべての単行本を読み尽くしたことになる。佐藤友哉の作品は傑作と呼ぶには完成度が低くて未熟なものもあった。でも、ぼくにとっては全作品がとても思い出深く感じられる。『フリッカー式』のせいでひどい春休みを過ごすことになったし、『エナメルを塗った魂の比重』のせいで一年間教室での生活はとても惨めなものになった。ぼくは高校二年生を、佐藤友哉の小説に刻みつけるようにして破壊し続けた。そしてもうすぐ最後の小説を読み終わることができる。
そこで最近の佐藤友哉だ。急に活動が活発になっている気がする。ニコニコ動画での「芥川賞計画」は見ていると楽しいけど情けなくなってくる。今月は群像・新潮・文学界の三誌に登場するという快挙を成し遂げた。少し覗いてみたところ、要するにサリンジャーについて語りたかったらしい。さすがぼくたちの佐藤友哉、やるときにはやってくれる。
応援しているのか貶しているのか自分でもわからないまま、これからも佐藤友哉の書いたものを読み続けていけたらと思う。青春が終わった佐藤友哉が果たしてこれまでどおりの人気を保てるのか、あるいは小説を書き続けられるのか、冷や冷やしながらその結果を楽しみに待ちたい。