『孤独の発明』ポール・オースター(訳:柴田元幸)

孤独の発明 (新潮文庫)

孤独の発明 (新潮文庫)

1/18読了。今年8冊目。
オースターの長編デビュー作。『幻影の書』まで読んだから今度はデビュー作から読んでいく。
失礼を承知で言うと、とても若さを感じさせる小説だ。『ムーン・パレス』以降の作品はとても寓話的だと思うのだけど、『孤独の発明』ではどのような思想をもって寓話的な小説を書くに至ったのか、その思考の経緯を見ることができる。よりシンプルに表現するならば、つまり哲学小説で、思想を寓話というオブラートに包まずそのまま提示するという点で、とても若々しい作品だと思う。
作家として生きる人間は、人生の中でさまざまなことに挑戦する場合が多いと思う。でも、キャリアにおけるどのタイミングで、自分の思想の核となるものを直接に書くか、というのは作家によってバラバラだ。若い頃に自分の様々な可能性を模索して、老年に至って自分の核となるものを総括する作家もいれば、あるいは哲学的な自問自答から出発して、後から実践する作家もいる。ポール・オースターの出発点は詩だから、どちらかといえば後者に属するのだろうと思う。ぼくは詩を読まないからよくわからないのだけど。