『灰色のダイエットコカコーラ』佐藤友哉

灰色のダイエットコカコーラ

灰色のダイエットコカコーラ

1/16読了。今年7冊目。
この小説を佐藤友哉という作家と結びつけて語るのは巧妙な罠である気がする。『世界の終わりの終わり』を除けば、佐藤友哉の作品の中でもかなり私小説的な作品だが、いわゆる「作家萌え」を誘発するような意図を感じた。多くの思春期の少年少女が『人間失格』の主人公を自分と重ね合わせて太宰治に親近感を持つように、『灰色のダイエットコカコーラ』も佐藤友哉という作家への共感を呼び起こすような気がする。それに素直にのっかってしまうほど、ぼくは冷静さを失っていない。『灰色のダイエットコカコーラ』の連載が始まったのは、『クリスマス・テロル』での露悪的な「作家本人の叫び」のあとだ。この小説のラストを読んで「佐藤友哉は大人になったんだね」なんて思ってはいけない。
言い訳として自己分析しておくと、けっきょくこの慎重さも、「『人間失格』の主人公はぼくだ!と思っていたら実はみんな同じことを思っていて自分の凡庸さに気づくような人間」と自分との差異化を狙ってのものだろうけど。こういうひねくれたところは昔から変わらないなあ。