『子供たち怒る怒る怒る』佐藤友哉

子供たち怒る怒る怒る (新潮文庫)

子供たち怒る怒る怒る (新潮文庫)

12/29読了。今年141冊目。
佐藤友哉のいいところがうまく発揮された傑作だと感じた。佐藤友哉の特性は自意識と小説のセンスだと思う。逆に、技術的に少し稚拙なところが欠点ではないかと思う。欠点も愛せるんだけど、そこは措いて。『子どもたち怒る怒る怒る』では、ほとんどの短編が15歳以下の子供の語りで構成されている。そのため、不器用な語りがむしろ長所として表れる。また、自意識はそのまま書いただけではただの気持ち悪い小説だけど、解説の言葉でいうところの「アナーキズム」を主題とすることで自意識が思想的な深さにつながっている。「小説のセンス」というのは、確かな形を持たない思想を小説の中に組み込んだときに、それをちょうどよいバランスで表現する能力、というような意味で使った。それぞれの短編での試みがすべてバランスよくまとまっている点で、佐藤友哉の能力が発揮されていると言えると思う。