『暗闇の中で子供』舞城王太郎

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

12/20読了。今年126冊目。
煙か土か食い物』の続編。もう舞城の文体は読んでいるだけで気持ちいいから、どんどん読むスピードが上がって、けっきょく全体の物語がどんなふうだったか意識できない。いま読んでいるところに注目していて、物語全体の中の一部分として意識したり、あるいは文全体の構造を把握したりできない。でもこれって舞城が作品の中で主張していたこととそっくりだから、やっぱり構造は無視してもいいかな、という気持ちになった。
そこで何となく思ったのだけど、舞城は性的な快感や暴力の快感に比べると食べ物の話ってほとんどしない。出てくることは出てくるのだけど、例えばひっくり返される石狩鍋みたいに食欲を満たすものとしては描かれない。『アメリカ文学のレッスン』の「食べる」という節の中でヘンリー・ミラーの『南回帰線』が紹介されていて、その欲求に正直に「現在」を生きている主人公から舞城の小説を連想した。しかし『南回帰線』では食欲が最も重要視されるらしいので、その点では決定的に違うと思った。