『アブサロム、アブサロム!(下)』ウィリアム・フォークナー(高橋正雄・訳)

12/16読了。125冊目。
下巻は3日で読んだ。一気に読むとすごい熱量が流れ込んできて、すごくおもしろい。
アメリカ合衆国南部に黒人とピストルを携えてやって来て、家を建てて、結婚して、成功しようとしたトマス・サトペンというひとりの男の話。要約するとたったの一文。しかし、この小説は「語り」を幾重にも積み重ねることによって成り立っており、ただ事実を伝えることに特化した文章とはまったく違う。ひとつの話を何人もの視点から語り直して、世界を練り上げてゆく。その方法に対して、世界は本来こういう成り立ち方をしているんだとか、語りのエネルギーに感動したとか、言葉にすると非常に陳腐な感想しかぼくには述べられない(この言い訳もそろそろ苦しい)。
フォークナーが後世の作家に与えた影響の大きさについて考えた。ガルシア=マルケスはすごく影響を受けていそう。中上健次は特に有名だし、他にも「サーガ」という作品群を書いているひとはたぶんサリンジャーかフォークナーの影響だろう。阿部和重の「神町サーガ」とか。確か佐藤友哉も『1000の小説とバックベアード』で『アブサロム、アブサロム!』を登場させていた。