『倫理21』柄谷行人

倫理21 (平凡社ライブラリー)

倫理21 (平凡社ライブラリー)

11/26読了。
講演を再編集して書籍化したもので、講演の口調で書かれているためとても読みやすい。空き時間に少しずつ読んだ。
テーマとなっているのは共同体規範とは違う意味での「倫理」で、それをカントなどの哲学者を参照しながら解説している。自由というのは、「自由であれ」という至上命令に従うことである、他者を手段としてのみならず同時に目的として扱え、といったことが繰り返されている。
ぼくは、第七章の「幸福主義(功利主義)には「自由」がない」を最も興味深く読んだ。幸福主義=資本主義経済は、他者を目的として扱うことを犠牲にして、ただ手段としてのみ扱うことを肯定してしまっている、これはまったく「自由」ではない、という話。幸福主義では絶対にうまくいかない部分があるし、特に環境問題のような未来の他者(合意が成立し得ない人たち)との問題ではまったく機能しない。言われてみると至極当然なことなのだけど、実際にはその通りに実践することはとても難しい。でも、幸福主義以外の可能性を念頭においておくことは、倫理というものを考える上で、とても重要なことだと思った。