『イワン・デニーソヴィチの一日』ソルジェニーツィン

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

10/7読了。今年98冊目。
ソルジェニーツィンといえば東浩紀がデビュー作で扱った作家という知識しか持っていなくて、自分の無教養さを痛感した。
ソ連がまだ存在した時代、冷戦がリアリティを持っていた時代は、ぼくにとってはまったく遠い世界のように思える。ソ連崩壊が1991年、ぼくが生まれたのが1992年。でも、シベリアの極寒の収容所で毎日を過ごすことは、寒さや空腹といったわかりやすいイメージで想像力を煽るから、政治史としてのスターリンの独裁よりもはるかに身近に感じられる。それにしても、収容所生活を強いられているにもかかわらず、主人公シューホフはなぜか明るく、少し不気味に思えた。被害者意識がない。佐藤友哉はいわば被害者意識しかない作家で、普段から読んでいると気がつかないうちに卑屈になるのかも。