『テクストから遠く離れて』加藤典洋

テクストから遠く離れて

テクストから遠く離れて

6/21読了。今年60冊目。
脱テクスト論をめざす本。ふせんをベタベタ貼りながら、けっこうしっかり読んだ。
「作者の死」や「シニフィエシニフィアン」などの簡潔な解説としても読めるし、文芸批評としても読める。とりあえずその視点からはおもしろい。
全体としては三部作で、第一部はテクスト論の概要の解説と、『取り替え子』の批評による「作者の像」の提示。第二部はシニフィエシニフィアンの解説から「換喩的な世界」の話をして、デリダとバルトの「作者の死」の差異に言及しながら『海辺のカフカ』や『ニッポニアニッポン』の読解。この章のラカンの解説はわかりやすくてよかった。第三部はフーコーの「作者の死」と『仮面の告白』。この章は『仮面の告白』の読解はおもしろいけど、少し議論がわかりにくかった。最もおもしろかったのは第二部で、実践的な読解よりはラカンやバルトの解説の方が楽しんで読めた。細かい部分でいろいろと言及したいところはあるけど、全体としては特に力強い議論ではないと感じたし、脱テクスト論まではまだまだ遠いのだろうと思った(べつにテクスト論の終わりを望んでいるわけではないけど)。