『ぼくは落ち着きがない』長嶋有

ぼくは落ち着きがない

ぼくは落ち着きがない

5/26読了。今年51冊目。
普通の高校の図書部の何も起こらない日常の話。30代の作家がここまでうまく高校生の青春小説を書けることに感動した。読んでいてはっとさせられるところがたくさんあったし、もやもやした感じとか、うまく物語にならない感じまで含めてすごいと思う。一気に読んでしまった。
とりあえず自分の所属している部によく似てる。放課後何もせず下校時刻までだらだらしてたり、なんだかずれているけど個性的ではない人が集まっていたり(ぼくも然り)、わざわざ狭い部室にぎゅうぎゅう詰めに集まって弁当食べたり、普通だった人が部長職に就いたとたんに権力振るい出したり。でもぼくは男子校だし、(一応)運動部だから少しずつ違うところもあるかな。文化系高校生うらやましい……。
登場人物が多いのにそれぞれのキャラが薄くて、わかりにくいとか誰がしゃべっているのかわからないという声もあると思うけど、これはこれでたぶん合ってる。というのも、高校生の会話って誰がしゃべっているのかとかどうでもよくて、その場の雰囲気が重要になるから。主人公の主観で描写されてるけど、あくまで三人称表現にこだわるのもうまい。キャラの薄さも現実的で、デフォルメされていない人物ばかりで居心地がいい。登場人物を好きになれる小説なんて久しぶりだった。
謎の読書家の転校生とか、不登校の女の子のこととか、解決されていない問題はたくさんある。でもただほったらかしなのではなくて微妙なところに落ち着く。そのすっきりしない感じも高校生の青春っぽくていい。どうでもいい日が多くて、かなり早いスピードで時が過ぎるけど、でも1年に1回くらいどうしても語られなければならない日がある。そういうところも実感としてちゃんと描かれている。
小説の中に作者を模したかのような人物が登場するのだけど、もしかして長嶋有は高校の図書館司書をした経験があるのだろうか。ちょっと違うような気がするんだけど。