『エナメルを塗った魂の比重』佐藤友哉
エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室 (講談社ノベルス)
- 作者: 佐藤友哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/12/06
- メディア: 新書
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鏡家サーガ2作目。今回の主人公は鏡稜子で、舞台はいじめが横行する北海道のとある高校。
数人の人物の視点を通して物語が語られるのだけど、どの人物もどこか少し壊れている。人肉しか食べられないとか、コスプレでアニメのキャラに自己を投影するとか、(少し特殊な環境にいるぼくには判断しかねるけど、たぶん)過激ないじめをうけているとか、ドッペルゲンガーを見たとか。この違和感はキャラクター小説にしか作り出せないと思い、その価値を再認識した。
とにかくとても面白い小説だと思う。ミステリーとしてどうかと問われれば、正直なところ不完全な気がする。でも、ぼくがミステリーに求めるのは、トリックやサスペンスではなく(もっとも、叙述トリックはけっこう好きだけど)、キャラクター小説の要素だとなんとなくわかってきている。だから、こういうのがぼくにとってのミステリーの理想型なのかもしれない。
ホントはまだみんなとならゆっくり歩いていたいけれども
こんな僕が変われるなら今しかないって気がするんだよ。
(Am I) confusing you? / スーパーカー
どうでもいい理屈並べながらも、ぼくはこの小説を読み終わってから毎朝この曲を聴いて、この小説を思い出している。何が変わるわけでもないけれど、その意志だけでも青春っぽくていいと思う。読む時期を間違ったとは思わないけど、もしこの小説を3年前に読んでいたら、きっと今とは別の自分に出会っていたような、そういう感触がある。それくらい強い衝撃を覚えた。