『エナメルを塗った魂の比重』佐藤友哉

5/7読了。今年41冊目。
鏡家サーガ2作目。今回の主人公は鏡稜子で、舞台はいじめが横行する北海道のとある高校。
数人の人物の視点を通して物語が語られるのだけど、どの人物もどこか少し壊れている。人肉しか食べられないとか、コスプレでアニメのキャラに自己を投影するとか、(少し特殊な環境にいるぼくには判断しかねるけど、たぶん)過激ないじめをうけているとか、ドッペルゲンガーを見たとか。この違和感はキャラクター小説にしか作り出せないと思い、その価値を再認識した。
とにかくとても面白い小説だと思う。ミステリーとしてどうかと問われれば、正直なところ不完全な気がする。でも、ぼくがミステリーに求めるのは、トリックやサスペンスではなく(もっとも、叙述トリックはけっこう好きだけど)、キャラクター小説の要素だとなんとなくわかってきている。だから、こういうのがぼくにとってのミステリーの理想型なのかもしれない。

ホントはまだみんなとならゆっくり歩いていたいけれども
こんな僕が変われるなら今しかないって気がするんだよ。
   (Am I) confusing you? / スーパーカー

どうでもいい理屈並べながらも、ぼくはこの小説を読み終わってから毎朝この曲を聴いて、この小説を思い出している。何が変わるわけでもないけれど、その意志だけでも青春っぽくていいと思う。読む時期を間違ったとは思わないけど、もしこの小説を3年前に読んでいたら、きっと今とは別の自分に出会っていたような、そういう感触がある。それくらい強い衝撃を覚えた。