『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル(著), 池田 香代子(翻訳)

夜と霧 新版

夜と霧 新版

〈わたしたちは、おそらくこれまでのどの時代の人間も知らなかった「人間」を知った。では、この人間とはなにものか。人間とは、人間とはなにかをつねに決定する存在だ。人間とは、ガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りのことばを口にする存在でもあるのだ〉
「言語を絶する感動」と評され、人間の偉大と悲惨をあますところなく描いた本書は、日本をはじめ世界的なロングセラーとして600万を超える読者に読みつがれ、現在にいたっている。原著の初版は1947年、日本語版の初版は1956年。その後著者は、1977年に新たに手を加えた改訂版を出版した。
世代を超えて読みつがれたいとの願いから生まれたこの新版は、原著1977年版にもとづき、新しく翻訳したものである。
私とは、私たちの住む社会とは、歴史とは、そして人間とは何か。20世紀を代表する作品を、ここに新たにお送りする。

3/26読了。今年28冊。
「東大教師が新入生にすすめる100冊」にも選ばれる名著。心理学者が描く強制収容所
残酷さを伝えるという役割においては文章では映像には勝てない。「映像の世紀」で見た生々しい衝撃に比べれば、この本で感じた戦争への嫌悪感・恐怖感は弱いと言わざるを得ない。
しかし、『夜と霧』の感動は別のところにあると思う。著者は収容所の中でも心理学者としての意識を失わずに、精神分析を続け、仲間を励まし続けた。その悲しさと逞しさに世界中が感動し、現代まで語り継がれてきたのだろう。