『ポストコロニアリズム』ロバート・J・C・ヤング(本橋哲也・訳)

ポストコロニアリズム (〈1冊でわかる〉シリーズ)

ポストコロニアリズム (〈1冊でわかる〉シリーズ)

アフガニスタンパレスチナアルジェリア、インド、ブラジル…ポスト植民地のさまざまな「情景」をたどるモンタージュの旅に読者をいざないながら、著者はポストコロニアリズムが問いかけるものを複層的に浮かび上がらせてゆく。ポストコロニアリズムとは何よりも具体的な政治・社会・文化の状況を出発点にふまえた、下からの視点による思考であり実践なのだ。第一人者が書き下ろした待望の入門書。

2/12読了。今年13冊目。
ポストコロニアリズムの概説書。思想の解説ではなく、今現在世界各地に存在するポストコロニアルな問題を書き連ねるという本。とても面白かった。
思想の入門書は、基本的に日本人の書いたものの方がニュアンスが伝わりやすいような気がしていたけれど、この本は翻訳本でありながら割と読みやすかった。これと同じシリーズの『心理学』は翻訳が英語の直訳のようで読みにくかった覚えがある。
明日は友達とチェ・ゲバラの映画(39歳の方です。28歳の方は1月前に見ました)を見に行く予定なのだけれど、この本の6章で彼の思想について述べられている。図書館で何となく借りたのだけれど、タイミングよく読めたと思う。映画では思想的なものが伝わりにくいので、文章の形で読めてよかった。

ファノンとゲバラとの知的バックグラウンドも、サルトル精神分析マルクス毛沢東の混合という点で、きわめて似ている。ゲバラは人づきあいがよく、ファノンは気むずかしい孤独を好む人間だったという違いはあるが、彼らはどちらも肉体的にも知的にも激しさのかたまりだった。ファノンによる暴力の強調はときに、まさに彼自身のあふれでる情熱と力、緊張、激情、怒り、切望の表れであるように思われることがあるし、同様に彼の激しい言葉づかいや身振りもその人格の特徴と見えることがある。(185ページ)