『七胴落とし』神林長平(ハヤカワ文庫)

七胴落とし (ハヤカワ文庫 JA 167)

七胴落とし (ハヤカワ文庫 JA 167)

1/15読了。今年4冊目。
子供は感応力を持っている、という以外はぼくらが生きている世界と全く変わらない世界で。主人公の三日月は、大人になって感応力を失うのを恐れていた。感応力をまだ失っていない子供たちが通う予備校で、真美という少女と出会った。感応力を使って危険なゲームに身を投じる。現実でも幻でもない少女・月子。祖父の刀の七銅落とし。その鋭利な死のイメージは、三日月を魅了する。
神林長平の小説を読むのは初めて。文体は簡潔で、感覚的。知覚をそのまま文字にしたような文章。思春期の男の子から見た殺伐とした世界を描くための文体なのかもしれない。
このテーマ設定は、今のぼくにはリアルすぎる。今はすでに終わってしまったのだけれど。一年くらい前だと思う。大人になりたくない、大人は嫌いだ、なんて単純なものではなくて、鋭敏な感性を失いたくないとか、可能性(妄想かもしれない)を失いたくないとか。もちろんこれが大人にとって嘲笑ものであるのはわかっていて、今となってはほとんど諦めているのだけれど。でも、日々能力が落ちていくのを感じながら生きるのは、切実に辛かった。その感覚を見事に表現しきった小説だと思う。