動物化するポストモダン / 東浩紀

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

注目の批評家による画期的論考!!物語からデータベースへ

オタクたちの消費行動の変化が社会に与える大きな影響とは?
気鋭の批評家が鋭く論じる画期的な現代日本文化論!

オタク系文化を批評する意義――オタク系文化はJポップのような国民的広がりをもつ文化ではないが、決してマイナーな文化でもない。オタク系の消費者は、きわめて活動的な層に限っても、数十万の規模を下げることはないと思われる。そしてさらに付け加えれば、オタク系文化はもはや日本だけの現象でもない。オタクたちが作り上げたコミックやアニメ、ゲームなどの独特の世界は、アジア地域のサブカルチャーに深い影響を与えている。最後にもうひとつ加えれば、日本のネット文化の基礎はオタクたちによって築かれている。したがって、いま、日本文化の現状についてまじめに考えようとするならば、オタク系文化の検討は避けて通ることができない。
本書の企図は、オタク系文化について、そしてひいては日本の現在の文化状況一般について、当たり前のことを当たり前に分析し批評できる風通しのよい状況を作り出すことにある。――本書より

 言わずと知れたオタク評論の名著。読む前から何かと名前は聞いていて、内容を何となく想像していた。実際読んでみて想像と違った部分は2つ。
 一つはエヴァンゲリオンはあまりとりあげられていないこと。社会現象を引き起こし、社会でのオタクの立ち位置をかえて、オタク第三世代を生み出し、その後のオタク文化に多大な影響を与えた。そういわれているなら、きっとこの本でもターニングポイントとして扱われていると思っていたけれど、それほど出てこない。「萌え」が浸透した作品としては、より極端な例として、「デ・ジ・キャラット」の方が大きく取り上げられていた。シミュラークルの部分でも、エヴァンゲリオンについては少しで、萌え要素の細分化が例として出ていた。物語消費でも、ノベルゲームが例に挙がっていた。エヴァンゲリオンは重要なのだろうけれど、それ一つでオタク文化の変化を語るには不足だということだろうか。
 もう一つは、オタクと一般人を対照的なものとして見ていないこと。特にポストモダンが顕著に表れているのがオタクだというだけで、ポストモダンは日本中で見られる現象だと言うことだ。オタクが進んでいるかはともかくとして。
 「大きな物語」の消失やデータベース消費など、とても面白い。なぜ同級生がエロゲにはまるのかという理屈もわかってすっきりした。理屈ではない部分も大きいのだろうけど。