『EUREKA』

青山真治監督作品。2000年の1月に公開された映画で、ちょうど後悔から10年が経っていることになる。しかし時代なんてどうでもいい。ほんとうに素晴らしい映画だった。「感動」という現象が陳腐であることを知りながらも、感動したと叫びたい。ストーリーも映像も役者も音楽も完璧だった。ぼくは映画に詳しくなくて、この映画を他の作品との関係性の中に位置づけることができない。『EUREKA』はぼくの中で位置を定めず、ぼんやりと広がっている。やがては感動も冷めて、他の映画と比較してしか評価できなくなってしまうことがとても惜しい。いまはただこの感動にひたっていたい。
ジム・オルークユリイカが流れだした瞬間にこみあげてきた気持ちは、どんな言葉でも表現できない。いままでずっと聴いてきた曲だったが、映画の中で聴くとまったく違った印象だった。この選曲はとても妥当なようにも思う。音楽における音響派ポストロック*1のように、この映画も空気を表現しているのだろう。映像はずっとセピア色で、セリフは少なく、上映時間は217分と長い。しかし、一秒も退屈することはない。そこで表現されているものは複雑なものではなく、とても素朴なものであると思う。

*1:映画における音響派にあたる作品は、きっとゴダールなどの前衛的な作家がつくっているのだろうから、『EUREKA』を音響派と呼ぶのは不適切だと思って修正しました