『百年の孤独』G・ガルシア=マルケス 鼓直 訳

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

そして愛は、誰を救えるのだろうか? 孤独という、あの底なしの淵から……。
蜃気楼の村マコンドの草創、隆盛、衰退、そして廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の誰彼に受け継がれた孤独の運命は、絶望と希望、苦悩と悦楽、現実と幻想、死と生をことごとく呑み尽くし……。1967年に発表され、20世紀後半の世界文学を力強く牽引した怒濤の人間劇場が、今、再び幕を開ける。

2/22読了。今年16冊目。
去年の春に、雑誌『考える人』の海外長編小説特集のランキングを立ち読みした。すると、『カラマーゾフの兄弟』や『戦争と平和』をおさえて、この『百年の孤独』が第一位だった。だから、『百年の孤独』は『カラマーゾフの兄弟』を超えるような、深遠なテーマを含んだ考えさせられることの多い小説なのだろう、とイメージしていた気がする。
でも実際に読んでみて、それがまったくの見当違いであることはすぐにわかった。ただひたすらに、ブエンディア家の短いエピソードがたくさん書き連ねられている、そういう印象を受けた。
訳に関しては、とても読みやすい。翻訳が新しいこともあるし、けっして複雑なことが書かれた小説ではないからだと思う。
似たような名前が多くて読みにくい、ということを聞いていたけれど、それに関しては『戦争と平和』の方がややこしかったと思う。家系図をつけるべきではない、といわれているようだけど、確かに、名前を忘れても家系図を見ずにどんどん読み進めていった方が良いような気もして、後半はほとんど見ていない。
この小説は、19世紀ロシア文学のような威厳に満ちた「名作っぽさ」はない。読み終わったときにも、壮大だったなあ、と振り返ったりしなかった。ただ時が流れて、家が滅びた。狂っているのに狂っているようには描かれない人々が生きて、そして死んでいった。それが大量の情報になって押し寄せてくるようなそういう印象を抱いた。

また、百年の孤独を運命づけられた家系は二度と地上に出現する機会を持ちえないため、羊皮紙に記されている事柄のいっさいは、過去と未来を問わず、反復の可能性のないことが予想されたからである。(473ページ)