『壬生義士伝(下)』浅田次郎

壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)

壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)

五稜郭に霧がたちこめる晩、若侍は参陣した。あってはならない“まさか”が起こった―義士・吉村の一生と、命に替えても守りたかった子供たちの物語が、関係者の“語り”で紡ぎだされる。吉村の真摯な一生に関わった人々の人生が見事に結実する壮大なクライマックス。第13回柴田錬三郎賞受賞の傑作長篇小説。

9/18読了。今年79冊目。
ぼくの新撰組に関する知識のほとんどは、大河ドラマの『新撰組』から得たものだ。そしてもちろんのこと土方歳三のイメージは山本耕二だし、永倉新八のイメージは山口智充だ。『壬生義士伝』を読むときにもそのイメージを持ったままだったけれど、描写されている顔立ちがまさに『新撰組!』の役者と一致していて、素晴らしいキャスティングだったのだなあ、と思った。もしかしたら逆に役の影響で役者のイメージがついたのかもしれないけど。
大野次郎右衛門は架空の人物である、とWikipediaに堂々と書かれてあった。とすると、この話の核の部分は史実とは全く違うものだということだ。そんなことはあまり気にならないタチだけど、歴史の勉強にはならなかったなあ。語りの形式だから、山南さんがほとんど出てこなかったりと、もともと新撰組が描かれているわけでもなし、正直史実なんてどうでもいいか。
吉村貫一郎の「生き様」が描かれている小説だと思う。50年後に当時の知り合いに語らせる、という形式はこの目的に素晴らしくフィットしていると思った。歴史を追う興奮はなくとも、吉村貫一郎の人間らしさが伝わってくればそれでよい。この小説は本当にそれに成功している。